「やっぱり悪いドラゴンをやっつけて英雄に、だよな!」

授業が終わった後、フランクスが他の男の子とそういう話で盛り上がってた。
そりゃあ、伝承にある英雄の話はドラゴン退治が多いし、今は戦争が無い分手柄を立てるにはドラゴン討伐とかが理想かもしれないけど。

「でもさ、ドラゴンが悪いって一方的に決めつけるのもどうかな?」

昔から疑問を抱いていた点を、フランクスに話してみた。

「例えばさ、アリューシャの英雄の話。火山に棲んでたドラゴンはもともとそこに暮らしてたわけ。ドラゴンがいたから火山が噴火してないのに、人間が後からふもとに住み始めて……家畜を食うから悪いドラゴンだ!ってさ。ドラゴンのおかげで安全に暮らしてるのに……悪者に仕立てて生け贄を捧げるとか…で。余所者が来てドラゴン退治して、生け贄の美人さんとめでたし、めでたし。ってさ。ドラゴンからすればやり切れないよね」

でも、フランクスは顎に手を当てて首を捻る。

「そっかあ?そもそも、火山になんて住む必要ないだろ?すべては人間様に逆らうドラゴンが悪いんだから…なぁ?」
「だよな!やっぱりドラゴンは悪者さ!」
「そうだ、そうだ!ドラゴンは退治されるべきだ」

騎士見習いの男の子たちは、概ねフランクスに同意してしまう。

「おれは騎士になったらドラゴン退治でも何でもして名を挙げたい。そういうミリィこそ、騎士になったら何をしたいんだよ?」

フランクスにそう問われ、咄嗟には答えが出なかった。