「誰が!おれがあんたに教えてやる必要性など、まったくないね!」

やっぱり、トムソンはトムソンだった。つん、とそっぽを向いて……子どもか。

やれやれ、とため息をつくとお父様は苦笑いをし、トムソンをなだめた。

「トムソン、あまりうちの子をいじめるな。いいライバルなんだろう?君の話すことはミリィのことばかりだからな」
「えっ?」

お父様が信じられない事実を暴露すると、トムソンの顔が青くなったあと、今度は耳まで赤くなる。……器用だなあ。

「伯爵家の次男だから、ミリィの婿の資格はあるな?頑張れば婚約者候補にしてやるぞ?」

「え、え、え……エストアール卿!な、な……ぼ、ぼぼ……ぼくは……」

なぜかお父様はやたら楽しそうだし、トムソンは真っ赤っかで狼狽えてる。わたしの婿?意味がわからない。

「お父様、先ほども言いましたが、わたしはまだ婚約者だのは考えられません。わたしの当面の目標は騎士の叙任……従騎士にすらなれてない身ですから、そんな先のことはまったく決められません」

わたしがきっぱり言い切ると、なぜかトムソンは気落ちしたように、お父様は安堵したように見えた。

「そうか……そうだな。すまん。親というものは、子どもの先々をついつい考えてしまいがちなのだよ」
「ご心配、ありがとうございます。ですが今は従騎士へなることが最優先ですから」

わたしがそう話せばなぜかジョワンさんが嬉しけで、アスター王子をチラチラ見てる。王子はいつもと変わりないように見えるけど……。

「じゃあ、ミリィ。オレの部屋にベッドを運び入れるからな」

なぜか、アスター王子は皆の前でそう言い、ちょっとした騒ぎを起こしたんだった。