「……わかってるよ、ミリィ。おまえの強い決意は。なにせ、私との勝負に勝ったのだからな」
お父様はフッと優しげな顔になり、わたしの頭に手を置いて髪を撫でる。
「マリアンヌによく似た綺麗な銀髪だ。だが、確かにおまえはドレスより鎧が似合う。将来素晴らしい騎士になりそうだ」
そう仰っていただけて、現金なわたしはぱあっと笑顔になってしまう。
「ありがとうございます、お父様。わたし、がんばります!」
「だが、怪我にはくれぐれも気をつけなさい。怪我をしないことも立派な仕事だからな」
「はい!気をつけます」
わたしとお父様のほのぼのした空気に、突然険呑な言葉が聞こえた。
「ふん!単に気を抜いてたんだろ。それで落馬して…みっともない。おれだったら、いくら疲れてもそんな無様な様は見せないね」
また、トムソンだ。
彼はわたしをあからさまに睨みつけてきてる。クセのあるくすんだ金髪を短めに刈り、オレンジがかった瞳でまあ整った顔立ちに、そばかすがある。初対面からやたら敵視されてきたけど……また、突っかかってきた。たぶん、昼間の木登りの仕返しだろう。子どもっぽくて嫌になる。
「そうか。じゃあ、ぼくもきみを見習わなきゃいけないね。まだまだ騎乗が不安定なんだ。教えてくれるかい?」
相手を褒めて持ち上げる……めんどくさいけど、これで大抵は引っ込んでくれるんだけど。



