「まぁ、ミリィ。綺麗よ」
「……ありがとうございます、お母様」

鏡の前の椅子に座ったわたしは、自分の姿が信じられなかった。
仮縫いで見ていたとはいえ、淡い水色のノースリーブAラインドレスはわたしの体に十分フィットするデザイン。幾重にも重なったフリルがさり気なく金の刺繍を輝かせてる。

靴もわたしの苦手なヒールの高い革靴ではなく、柔らかい布製。胸元にはメダリオンと、わたしの誕生石のアクアマリンのペンダント。
結い上げた銀の髪には、アクアマリンとシルバーの髪飾りがティアラのように輝いている。

両手には二の腕までの白いグローブ。顔はほんの少しだけお化粧を施された。

「……もう15になるのね……本当に、子どもと思ってたのに、女の子が大人になるのは早いわ」

お母様は感極まったのか、そっとハンカチで目元の涙を拭う。大袈裟だなあ、と微苦笑した。

「お母様、わたしはいつでも、いつまでもお母様の娘です」
「……そうね。こんなふうに子離れできないでいると笑われてしまうわね。いずれアスター殿下にお任せしなくてはいけないのに…」
「……はぁ?そうですか?今でもアスター殿下には仕えてますが…?」

なんだか最近、お母様がやたらアスター王子のことを持ち出してくる。意味かわからないから、とにかくそう答えておいた。