そして、ユニコーンのいのちがアスタークに流れ込む。見る間に身体が小さくなってゆく彼は、もがいた。

“嫌だ!戻りたくない…!!”

「アスターク!」

わたしが大声で呼ぶと、アスタークはビクッと体を揺らす。そして、恐る恐るこちらを見た彼に、笑顔でこう告げた。

「アスターク、わたし、待ってるよ。あちらで産まれたら、1からやり直して友達になろうよ……ううん、今でもわたしたち、友達だよ!ね?」
“ミリュエール…”
「……オレも、いるぞ」

アスター王子がぼそっと呟いた。

「弟ができるなら、嬉しい。母上もオレも…待ってる。オレたちは、家族だからな」
“……にい、さま……”

どんどんと小さくなったアスタークは……やがて赤ちゃんより小さくなり……光の粒になると、ソニア妃のお腹へ吸い込まれてゆく。

その場所をそっとソニア妃は両手で触れ、愛おしげに撫でた。

“アスター……ミリュエール……もう、お帰りなさい。あなた達の世界へ…きっとまた逢えるわ……”

グズグズ、とお菓子の家が溶けていく。おそらくアスタークが消えたからだろう。

「おい、早く来い!崩れるぞ!!」

ピッツァさんの叫びが聞こえ、急いでお菓子の家から出る。いつの間にか来ていたアクアの背に3人で乗ると、急速に崩れ落ちる世界からの脱出を試みる。

「しっかり捕まってろ!!」

アスター王子のその声を最後に、フッと意識を失った。