“なんで、君たちは邪魔をするの?”
アスタークが姿を現した。
そして彼が腕を振り上げると、突然アスター王子とピッツァさんがふっ飛ばされ、近くの木に叩きつけられる。わたしはそのまま彼のもとに引き寄せられ、片手で抱きしめられた。
「ミリィ!」
「アスター王子!!」
アスタークの周りが濃い霧で包まれると、そのままぐにゃりと景色が歪む。
そしてふわっと浮遊感を感じたあと、また綿に降りたように柔らかく着地する。
「ここは…?」
“ぼくと母様が暮らしてる家だよ”
周りはどこまでも続く花畑で、蝶や鳥が気ままに飛び回る。頭が痺れるような甘ったるい匂い……それは、あの人々を眠らせたものと同じだった。
家は、ごく平均的な平屋建ての民家と同じ。違うのはお菓子でできていることだった。まさに子どもの理想の家だ。
(……ここに、アスター王子の御母上様が……)
ゴクリ、と喉を鳴らした。ここまで来たら、予定通りにソニア妃を助け出さなくては…!
パンッと自分の頬を手で叩いて、気合いを入れ直した。アスタークは可哀想と思うけど、アスター王子に御母上様を返してあげてほしい。そう思いながら、わたしはその家へ足を踏み入れた。



