水を汲んで戻ると天幕の外に鎧を脱いで軽装になったアスター王子の姿があって、ぎょっとしたけど別に食われるわけじゃないから平気だ。

「……遅かったな」
「はい、遅くなって申し訳ありません。水を汲んでました…それと」

やっぱりアスター王子は関わる当人だから、隠してはいけないと思って明かした。

「ユニコーンに会ってました」
「……ユニコーンに?」

不機嫌顔だったアスター王子も、さすがにその話になると声をひそめて訊き返してきた。

「どういうことだ?ユニコーンは湖にしかいなかったんではないのか?」
「なんか、あの男性が色々試してたのでわかったみたいです。地下水脈や水源が繋がれば移動できるとか……で、ここからが本題です。
ユニコーンは命を助けてもらったお礼に、御母上様が夢の国から出る手伝いをしてくださるそうですよ」
「……ユニコーンが…?」
「はい。ただ、それにはあの男性に意識を乗っ取られたままではいけないそうで…今、なるべくコントロールする試みをしているそうです。
それと、意味深なことを言ってました。
これだけたくさんの人間が同時に同じ地に存在すると、無意識の夢のエネルギーで夢の国が現出するかも…と」