(……よし、誰にも見られなかったよね?)

水汲みと称してアクアと合流し、やや遠い沢に来た。

みんなは川で水を汲むだろうから、なるべく離れた場所でないといけない。

「ヒヒヒーン」

アクアの嘶きが森林の静謐な空気を震わせると、やがてしゃらん…しゃらん…とガラスのベルの音が聞こえてまもなく。淡く輝くユニコーンが姿を現した。

ユニコーンいわく、この土地は地下の水脈や同じ水源で繋がっている。だから、呼ばれれば現れると言われていたけど、本当に来るなんて……と驚いた。

そして、ユニコーンがアクアの嘶きに反応したのは、実はアクアが夜中に厩舎を抜け出して、ユニコーンのもとに通っていた事が判明したから。
密猟事件の時もやけにアクアはユニコーンを気にしていたな、と感じてはいたけれど。白い馬同士、気が合うのかもしれないな。


「ユニコーン、そちらの様子はどう?」
“変わりないな。やつはなかなか慎重でスキを見せぬ。近ごろはなかなか変わらなくなってきた”

アクアが忍んで会いにいくのを知ったわたしも、数日に一度はこっそり同行するようになっていた。だから、実はユニコーンと話して密かに計画を立てていた。ソニア妃を夢の国から救い出す計画を。

「……ユニコーンでも、夢の国には簡単に行けないんだ?」
“実体がある生物では無理だろう。夢の国は意識……魂のかたちでなければ行けぬ……ただ”

ユニコーンは淡々と、とんでもない事を言ってのけた。

“今のように大勢の人間が同じ地に存在する……その無意識の夢のエネルギーを利用すれば、あるいはその一部が現出するやもしれぬ”