狩猟地では王族や貴族以外原則野営。

王族や貴族は狩猟館での宿泊に加えて夜はパーティーもあるから、早々に森から離れてる。

引き続き騎士が狩猟館やその周辺を警戒するけど、野営地では見習いたちが上司の休む天幕を張り寝床を作る。領地でも散々野営の真似事をしてきたから、手慣れた作業はまったく苦にならない。

従騎士のフランクスやトムソンもさすがになれたもので、適切な場所を選定して天幕を張り終えた。

「ミリィ、公爵令嬢を助けたって?やるじゃん!」
「あ、うん…」

フランクスから褒められたけど、あんまり気分が浮き立たない。

「どうした?テンション低いぞ」
「……ぼく、アスター殿下の小姓なのに、離れ過ぎたうえに単独行動しちゃったんだよね」

今更ながら振り返ってみると、あまり褒められた行動じゃなかった。アスター殿下にどこまでもついていべきだったのか……。

「そんな事を言ってたら、公爵令嬢は死んでたんじゃないか?」

黙々と石で竈(かまど)を作っていたトムソンが、意外にも口を挟んできた。

「え?」
「おまえの行動があったから、ソフィア様は生き延びたんだろう?なら、判断は間違ってなかったってことだ」
「トムソン……」

従騎士になる前はやたら突っかかってきたのに、今は落ち着いて余裕さえ窺える。彼の励ましに、そうだねと頷いた。

「ありがとう、トムソン。そう思うことにする。胸を張って間違ってない!って言うよ」
「ふん…」

素直じゃないのは相変わらずだけれども。焚き火に照らされた頬が、ほんの少し赤く見えた。