「……これは?」
「護りの加護を与えた。他にもいくつか魔術を付与しておいた」

アスター王子の言葉が信じられなくて、目が丸くなる。

「えっ……アスター殿下、魔術師だったんですか?」
「魔術師を名乗れるほどではないが、一応な」

今の今まで隠されてきた実力を目の当たりにすると、ますます差を感じてしまうけど……。

「おいおい、アスター。ついに解禁しちまったのかい」

ピッツァさんの言い方だと、やっぱり彼女は知っていたみたいだ。

「アスター殿下は昔から魔術を……?」
「いや、アタシも数えるくらいしか見たことがないよ。ほんとにヤバい時にしか使わない。アスカーガの戦いだって、魔術無しに一人でフィアーナ軍を撃退したんだからね」

わたしの疑問にピッツァさんが答えてくれるけど……。

「本来、武人は魔術適性がないのに……」
「オレの魔術は大したことがない。母上はそれこそ魔術師と呼ばれても遜色ないほどの実力があられた」

アスター王子の証言で、やっぱり魔術適性は遺伝するんだ、と妙に納得した。

「あ、なら……御母上様の魔術でなにかできるかもしれませんね」

わたしがそう提案すると、アスター王子は頷いた。

「……そうか。オレの魔術と母上の魔術は質が似ている。なにか役立つかもしれないな」
「それにしても、アスター。ミリィには魔術使うなんざ。アスカーガの戦い以上に危機感あるんだな」

ピッツァさんがなぜか楽しそうにアスター王子に言うと、彼はきまり悪そうに押し黙ってしまう。

(頑張ろう……アスター王子のためにも)

まだ淡く輝くメダリオンを手に、改めて決意をした。