「ちょ、何を……」
「やめろ、ミリィ」

殴ろうと拳を振り上げた時、アスター王子が微かに震え声で囁いた。

「母上とオレのために、無理はするな」
「でも、たぶんぼくしかできませんよ?あの男の人はぼくを狙って……」
「だから、だ!」

息苦しくなるほど、より一層強く抱きしめられた。

「……おまえを、奪われたくなどない。おまえまで、夢の国に行ってしまったら…」

アスター王子の身体が……恐れを表すように、微かに震えている。それが、万の言葉よりもわたしの心を揺さぶる。

「大丈夫です。わたしは、絶対戻ってきます……アスター殿下、あなたのもとに。約束します。このメダリオンに賭けて」

わたしがアスター王子の肖像画の入ったメダリオンを手に約束すると、ようやく彼は顔を上げて苦みがある笑みを浮かべた。

「そうだな……ミリィ、おまえはそうだ。いつだって前向きで……オレの想像を越えていく」

アスター王子はそう言うと、わたしが手のひらに載せたメダリオンの上に手を被せる。そして、なにか呟くと……メダリオンがほんのりと水色に輝く。
キラキラと淡い光が立ち上り、微かなぬくもりをメダリオン越しに感じた。