「しかし、よく私の動きを予測したな」
「お父様の目の動きです。たぶん、昔から見てないとわからないクセですよ」
「ハハ、さすが私の娘だ」

試合が終われば、元の娘を愛する父親に戻ってわたしの頭を撫でてくださる。嬉しくて思わず顔が緩むと、アクアが馬鹿にしたような顔になってて。

「こら、アクア。主人をバカにして!」
「ヒヒィ」

そんなわたしたちのやり取りを、お父様は微笑ましくみまもってくださる。

「アクアはいい馬だ。騎士にとっても馬は大切なパートナー。ここまで通じ合えば頼もしい。大切にするんだぞ」
「はい!…あれ?」
「どうかしたか?」
「い…いいえ。なんでもありません」

お父様が心配そうに声をかけてくださるけど、今からそんな調子じゃ先が思いやられるわ。と少しおかしくなる。

「ミリィ、よく無事だったわね」
「お母様、心配かけてごめんなさい」
「本当にもう、あなたったら……でも、やっぱりエストアールの娘ね。もう、こうなったらお嫁に出すつもりで見送るわ……だから、好きに生きなさい。家のことは心配しなくていいから」

お母様はニコッと笑うけど……目の下が微かに赤い。きっと泣いてらしたんだとわかって胸が痛むけど……ごめんなさい、と謝りながらも道を曲げるつもりはなかった。