「トキくんが、そんなこと、言わないで……っ」



それだけ言って、走ってしまった。

大橋くんの告白から逃げたように、しずかちゃんから逃げたように、そして――好きな人からさえも。私は、逃げてしまった。



「さ、砂那ッ!」



トキくんの声が聞こえる。追いかけてきてくれる足音も。

だけど私は、すぐに近くの空き教室に隠れて、トキくんをやり過ごす。



「本当……逃げてばかりだよ、私……っ」



トキくんの足音を聞いた後、入ってきたドアに寄りかかり、膝を抱きしめて座る。そして声が漏れないようにと、声を押し殺しながら涙を流すのだった。