その後の事は、言うまでもなく……。

「そんな恰好で出てきちゃダメ」と注意をして、部屋の前まで送る。なんとか消灯時間までに帰すことが出来、ホッとしている俺とは反対に、



ガチャ



「トキくん、ありがとう。また明日ね」



一度締めたドアを開けて、それだけを言うために顔を出す倉掛さん。

「また明日」と言うと、倉掛さんは、はにかんで手を振った後にドアを閉めた。


パタンっ



「今日はもう寝れないな……」



楽しいことも悲しいことも、辛いことも嬉しいことも――

全部ぜんぶ、君からもらっている気がする。

それをいつか、二人で分かち合えたら……なんて思ってしまう。



「俺と同じ”好き”っていう気持ちも、倉掛さんがいつか経験してくれたらな……」



もちろん、相手は俺で。



その時に、廊下の明かりがパッと消える。

どうやら消灯時間が来たようだ。



「……暗いな」



明るかった廊下は瞬時に暗くなり、足元の明かりと、非常口を知らせる緑のマークだけが光っていた。


暗い帰り道。時々、明るい場所。


それはまさに、自分の恋路と同じだなと――そんなことを、思ってみたりした。