「……どうして私に言いたくないのか、聞きたい」

 私は自分の上に居るランスロットと、真っ直ぐに目を合わせた。

 クレメントと付き合っていた時にも、こうして相手に疑問に思うこと気になることをひとつひとつ丁寧に乗り越えていけていたら……と教訓を得た私は、この疑問に応えてくれるまでは、例え誘惑の塊のような彼だとは言え、こういう事はしないという決意を固めた。

 恋人とどうしても別れたくなくて、流されて。言いたい事を言わないという無駄な我慢を続けた結果がどうなるかは、私の初恋の末路で察して欲しい。

 ランスロットは、無言でこちらをじっと見つめるばかり。私にその事を話してしまうことで、何かの不都合があったとしても……きちんと知っておきたい。こういう事が気になってしまって、眠れなくなってしまいそう。

「何も言わないのなら、私に触らないで」

 膠着してしまった展開に我慢ならずに彼を見つめたままでそう言うと、ランスロットは一瞬目を見開いてから大きく息をついた。

「それは、困る……過去が気になります?」

「ええ。とても」

 言葉の応酬には負けないという強い気持ちが伝わったのか、どうなのか。彼はまた、二回目のため息をついた。

 彼に今グウィネスに対して何の気持ちもないのなら、何の問題もないはずなのにと思うと渋い表情になってしまうのはどうしようもない。

「これは、先に言っておきますが……僕自身は、何の言い訳もするつもりもありません。何も知らなかったとは言え、浅慮でした。婚約者の居る女性にそうとは知らずに声を掛けてしまったのは、事実です」