「何を?」
「昨日、遅くに総務へ寄ったの。そしたら貴之君がいて……。萌子が家に未成年の男の子を連れ込んでる、って。萌子の家で、直接その子に会って話したから間違いない、って……そう報告に来てたのよ」
「貴之が……圭人に会った……?」

 本当に? いつ会ったというんだろう? だいたい、貴之と別れてから彼が私の家に来たことなんてないはずだ。少なくとも、私が家にいる時間は。

「貴之君、どこから聞きつけたのか、萌子たちチームの社長賞が決まったことも知ってたみたい。それで、そんな問題行動のある社員に受賞させるなんて会社としてどうなんだ……って総務に突っかかって」

 貴之は、一体どこまで私を嫌うんだろう? かつては肩を並べて、切磋琢磨し合いながら働いてきた仲なのに。……いや、そう思っていたのは私だけだったのかもしれない。貴之は私に、肩を並べてなどほしくなかったのかもしれない。彼のずっと後ろに、一生追いつけない場所に、いてほしかったのかもしれない。

「一応あんたの元彼だから、あんまり悪く言いたくはなかったけど……。飯島貴之、あいつなかなか最低よ」

 もしかしたら、菜々にパワハラを訴えさせたのも貴之なのかもしれない。私を陥れる為に。そう考えたら、あの別れた日の彼の台詞——用意していたかのような——にも、合点がいく気がした。ああ、我ながらなんて男を見る目が無いんだろう。