『そういえば、私の隣で寝ていた人のことについて、なにか知っていますか……?』

『隣? 私が2人の病人を1つのベッドに寝かせたりなんかするはずないじゃないの。夢でも見たんじゃない?』

『そう、ですよね……私の勘違いでした。すみません』


 私の変な勘違いに思考を割かせてしまったのも申し訳ないし……。


 先生のお美しい顔を曇らせたことも考えると大罪に等しい。


 早くお昼休みにならないかなと、いつもより動きが遅い時計を力なく眺めた。


 そんな3時間目の国語の授業中。


浅川(あさかわ)。おい、浅川ひまり。154ページの3行目から音読してくれ」

「は、はいっ」


 教科書を両手に持ち、慌てて立ち上がった。


 集中していないのがバレていて恥ずかしい。


 2回目でようやく返事をするなんて、先生の言葉を聞き流していると言っているようなもの。


 ごめんなさい……と心の中で謝罪しつつ、特に噛むこともなく文を読み上げ続ける。


 しばらくすると、顔をしかめたままの先生が文の読み終わりでストップをかけてくれた。


「浅川がぼーっとしてるなんて珍しいな」

「す、すみません」

「体調が悪かったら保健室に行ってもいいんだからな。無理はするなよ」

「はい、ありがとうございます」