「わ、わかった。伝わったよ! だからね、もう、その、離れてほしいっていうか……」

「ダメ。もうちょっと」

「うぅ……はい」


 せっかく緩んでいた腕が、またしっかりと私を包み込む。


 そんなことされたら、突っぱねるなんてできない。


 再び密着した身体は、私の熱くなった身体とは正反対にほどよい体温で。


 私の鼓膜を揺らす、湯本くんの鼓動はずっと正しい速さで。



 ……ただ、私の心音だけがうるさい。



 湯本くんのあたたかさがお腹の痛みを和らげてくれたのに、湯本くんのあたたかさで胸がズキリと痛んだ。


 あれ、どうしてこんなにズキズキするんだろう?


 ドキドキしすぎて、心臓がおかしくなっちゃったのかな……?


「予鈴が鳴るまで寝ようよ」


 湯本くんはどこまでもマイペースで、不安に揺れる私なんて置いてけぼり。


 私が返事をする前にすぅすぅと無防備な寝息を立てている。


 私を喜ばせる言葉を紡ぐ湯本くんはもう夢の中にいるのに。


 予鈴が鳴ってから私たちの身体が離れるまで……私の心音は密かに騒ぎ続けていた。