久しぶりに乗る、昌也の車。


付き合っている間も、滅多に昌也の車に私は乗る事はなかった。


もしかしたら、私より他の女の子の方が沢山乗っているかもしれない。



昌也はひとけのない路地に、車を止めた。



「お前加賀見と付き合っているのか?」


「…うん」


そう正直に答える事に、気が重くなるのは、
この人が元彼だからとかではなく。


一夜が、ヤクザだからなのだろう。

一夜が世間では悪い人間だから。


「お前、加賀見は正真正銘のヤクザだぞ?
真湖、お前は一体何を考えて…。
そもそも加賀見も、なんで真湖と?
お前の身近に警察官が居るから、アイツは何か目的があって近付いて来た――」

「違う!
あの夜は、本当に偶然だった!」


私と一夜との出会いは、本当に偶然だったと思う。


もしかしたら、私がこの人の彼女だと知って、一夜は私に関心を持ったかもしれないけど。


一夜は、初め昌也を知らないと言っていたけど、本当は知っていたから。


「一夜は、偶然酔い潰れた私を拾っただけで」


あの夜以降、一夜が何の目的で私に構うのかは分からないけど。


ただ、一夜の私に対する好きだと思ってくれている気持ちは、本当だと思う。


一夜の私を見る目は、私を大好きだと言っていて。


私が触れると、一夜の鼓動は大きくなって。


私自身が一夜に対してそうなるから、分かる。

きっと、一夜と私は以心伝心なのだと思う。