「「カンパーイ」」


私はカシスミルク、一夜はビールで乾杯する。


あの後、タクシーに乗りS町駅の歓楽街から少し外れた、お洒落な居酒屋に、一夜とやって来た。


テーブルには、温野菜のサラダ、カナッペ、オイルサーモンとシソのパスタ。

骨なしのフライドチキン、ローストビーフ。

おでんの盛り合わせが並ぶ。

一夜が適当に、注文してくれた。


「この店、表向きにはそうじゃないけど。
うちの傘下の組の店なんだよ。
だから、俺なら何食べてもタダだから、遠慮しないで」


そう言われ、薄暗いこのお洒落な雰囲気の居酒屋は、ヤクザの経営なのか?と、
周りのテーブルのカップル達を見て思う。


みんな、ここがそういう店だなんて、知らないのだろうな。


「なんだか、一夜には色々して貰ってばかりだよね?」


「そう?」


初めのあのバースデーケーキ、
焼肉…は、鈴城さんがご馳走してくれたのだっけ?


ボーリング代に、今のこの食事。


「本当に私、体で返すしかないよね?」


「真湖ちゃん、大胆」


アハハ、と笑っているけど。



「だって、申し訳ないから…」


この先も、一夜と会えば、こうして私にこの人は色々としてくれるだろう。


「じゃあ真湖ちゃんは、俺が飯食べさせてあげたからお礼にヤラせてくれるの?」


そう言われると。



「そういうわけでは、ないけど」


「ないけど?」


「うん…。なんか、よく分かんない」


カシスミルクのグラスに、口を付ける。


まだあまり飲んでないけど、もう私は酔っているのかな?


なんだか、一夜に触れたい。



「俺の事好きだからって、素直に言えばいいのに?」


それに、お酒が喉の変な場所に入り、思わず噎せてしまう。


「俺も、ヤリたいだけで真湖ちゃんにこうやって、ご飯食べさせてるわけじゃないけど」


「じゃあ、なんで?」


「それは今じゃなくて、後でベッドで、耳元で囁いてあげる」


その言葉に、さらに酔いが回ったように、顔が赤くなり熱を持つ。