「真湖ちゃん。待たせてごめん!」


コンビニの前で30分程待っていると、
向こうから息を切らして走って来る一夜。



「え、そんなに走らなくても大丈夫なのに!」


「だって。あまり待たせたら、真湖ちゃん寂しがるでしょ?」


そう笑っていて。


なんだか、何も言えなかった。


多分、私はけっこうな寂しがり屋で。


今も一夜を待っている間、本当に来てくれるのか、凄く不安だった。


一夜は薄手のブルゾンを着ていて、
あの、赤いフレームの眼鏡をしている。


「スーツより、一夜はこっちの方がいいね?」


スーツ姿の時は、一夜はヤクザって感じがするけど。


今は、そんな事はなくて。


「そう?
俺、スーツよく似合うって言われるんだけど」


「いや。べつにスーツはよく似合ってるよ?」


それに、一夜はそっか、と呟き、私の手を握る。


こうやって一夜に手を握られる度にドキドキとするけど。


なんとなく、一夜は子供の手を握るような感覚なのかもしれないな?と、思ってしまった。


先程、一枝さんと話しているこの人を見ていて、
やはり一夜は私なんかよりもうんと大人なんだと、感じた。



「真湖ちゃん、食べるのもそうだけど、
何処か行きたい所ある?」


「特に、ないかな?」


もっと昼間とかなら、思い付いたかもしれないけど。


もう19時近くて、真っ暗で。



「そっか。
俺、いまいちデートとか何処に行っていいのか分からないんだよね。
だから俺、あんまりモテなのかも」


そう、少し困った顔をしている。


「一夜、今は本当に彼女居ないの?」


「居ないよ」


「ヤるだけの女の子は沢山居るんだっけ?」


「え?俺、そんな事言った?
お願い、忘れて」


アハハ、と誤魔化すように笑っている。