車は道が空いていて、すぐに私の自宅のマンション近くに着いた。
「なんか、淋しいな」
車窓の外、街灯の明かりはあるけど、人通りもなく、マンションに続く歩道は淋しい。
私はその道を、今から通るのか。
「淋しいとか、真湖ちゃん可愛いな」
そう言って、一夜は私の手を撫でるように触れて来る。
それがちょっと、くすぐったい。
「あ、そういえば、結局真湖ちゃんとデザート食べなかったな」
「そうだね」
「デザートは、次だね?」
また、次もあるのか。
もう父親をこの人に探して欲しい、という事は諦めたけど。
それが無くても、またこの人に会いたいと思った。
「うん。次だね?
じゃあ。今夜はありがとう。
ありがとうございます」
一夜と、運転席の早瀬さんにそう告げ、
ドアに手を伸ばすと。
「まだ、帰したくないな」
一夜の両手が私を捕まえ、引き寄せられる。
「え、一夜?」
そう言葉にしたと同時に、目の前に一夜の顔があり、
そっと、触れるようなキスをされた。
「え…」
車の中は早瀬さんも、居るのに。
キスしたの?
そう思っていると、一夜の両手が私の顔を包む。
再び、一夜の唇が私の唇に重なる。
今までの一夜のキスとは違い、私の唇を何度も啄むように触れ。
何度目かに、一夜の舌が私の口の中に入って来た。
なんだか、そのキスが気持ち良くて、目を閉じ。
早瀬さんが居るのに、と思いながらも、
私からも一夜の舌に舌を絡めた。
一夜とのキスが深くなって行き、お互いの息が乱れている。
一夜から、ゆっくりと唇を離した。
「また連絡するね?」
それに、うん、と小さく頷いた。
キスだけで、意識が飛びそうな程だった。
ボーとした意識で、車から降りて、
ゆっくりと家路を辿る。
途中で振り返ると、一夜を乗せた車は、走り去ってしまった。