早瀬さんが運転する車の後部席に、私と一夜が乗る。


そういえば、一夜はあの焼肉屋でお酒を飲んでいたけど、
早瀬さんは、お酒どころか食事すら摂っていなかった。


この車は、早瀬さんの車なのだろうか?


乗る時にチラッとしか見てないが、
黒い高そうな車だった。


そして、この車の後ろからもう一台、一夜の護衛達の乗る黒いミニバンが後を追うように走っている。



「―――そんな感じで、本当に、最低で」


何故か、その道中。


私は彼氏昌也に浮気をされた話をしていた。

話は、夕べ盗み見た昌也のLINE。


「そのLINE、ウケる」


隣の一夜は、ゲラゲラ笑っている。


「ウケないでよ」


「なぁ、早瀬?
別れた方がいいって思うだろ?
そんな男と別れて、真湖ちゃんは俺と付き合えばいいのに」


「加賀見会長と付き合うのも、それはそれでオススメしませんが。
ただ、真湖さんはその彼とは別れた方がいいとは思います」


早瀬さんも笑いを噛み殺し、
平然としたふりをしながら車の運転をしている。


「警察官なんて、本当にロクなもんじゃないな」


アハハ、と一夜が笑い、早瀬さんも肩が笑いで揺れている。


「でも、浮気以外は正義感の強い、とても真っ直ぐな彼なの」


本当に、昌也はそう。


悪い人間を許せない。


「そりゃあそうだとしても、彼氏としては最低じゃん。
本当に、真湖ちゃんなんでそんな男と別れないの?
意地になってる?」


意地…。


確かに、そうなのかもしれない。


そりゃあ、昌也の事、好きといえば好きなのだろうけど。


昌也と付き合い始めた頃から、友達や色々な人から、
昌也はイケメンでモテるから、苦労しそうや、苦労するよって言われていて。


その度に、大丈夫、って私は返して来て。


こないだみたいなデートのドタキャンとかも周りの友達に話す度に、
そんな男とは別れたら?って言われる事もあって。


その度、別れないって、私は言っていて。


そういえば、前に昌也が浮気してんじゃないかって、友達に言われた事もある。


私も疑いながらも、そんなわけないよ、とか笑って言ったり。


今までのその積み重ねで、昌也との事はもう意地みたいになっているのかも。


でも、それ以上に、昌也と別れて一人になるのが、淋しいだけかもしれない。