「夕べも、聖王会の傘下の組と、竹岡組でちょっとした小競り合いがあって。
どちらか暴行で引っ張ってやろうと思ったけど、お互い上手く口裏合わせて、なかった事にされて」


唐突に出された、聖王会の名に心臓が跳ねる。


そのトップの加賀見一夜と、私は昨夜一緒に居た。


けっして、一夜を好きになったとかじゃないけど、心の中に入り込んで来られた様な感覚がする。


心奪われる、というか。


イケメンはイケメンなのだけど、なんとも言えない魅惑的な色気のある、男の人だった。


けっして、好きなわけではないけど。


けっして、好きなわけでは、ないのだろうか?


「ほんと、加賀見さえなんとか引っ張れたら、聖王会ごと壊滅させれるのに。
けど、絶対、あいつ警察の上層部の誰かの弱みを握ってるか、買収してるんだよ」


時々、昌也はそう溢している。


だから、加賀見一夜は逮捕出来ない、と。


何かしら、加賀見一夜を引っ張れそうな罪状を用意しても、上から待ったが掛かる、と。



「思っていたけど、いいの?
私にそんな警察の内部事情話して?」


以前から、それは思っていた。


昌也はよく仕事の話をする。


「だって、もう真湖は身内みたいなもんだから、大丈夫」


「身内…」


まだ、そうじゃないけど、と思う。


昌也は、仕事の事に限らずよく話す人。


昔から社交的で、男女共に友達も多くて。


だから、浮気ばかりするのだろうか?