「昨日は、本当にごめんな」
夜の19時に、昌也のマンションの部屋で待ち合わせ。
私が行くと、もう既に昌也は帰って来ていた。
私の誕生日のやり直しだと、テイクアウトのフライドチキンを大量に買って来てくれていて、
ワンルームの部屋のテーブルの上に、その箱が置かれている。
「ううん。いいよ」
そう頷きながら、目の前の昌也を凝視してしまう。
この人、浮気してるんだよね?
昌也はそんな私の気持ちなんて知らず、
テーブルを挟んで向かいに座る。
スーツの上着を脱ぎ、ネクタイを外し。
手には、缶ビール。
「ほんと、最近仕事が忙しくて」
何も訊いてないのに、仕事が忙しい話ばかり。
仕事が忙しいのは全くの嘘ではないのだろうけど、
その傍ら、浮気してるくせに。
「だから、真湖の誕生日プレゼント、まだ買ってないんだよな」
「そう」
「でも、どうせ、真湖は俺があげたものあまり使わないもんな?」
「え?そう?」
「だって。こないだ買ってやったネックレスだって、全然付けてないし」
ネックレス?
「…ネックレスって、一昨年貰ったやつ?」
一昨年の昌也からの誕生日プレゼントは、ネックレスだった。
それ以降、昌也にネックレスなんてプレゼントされていない。
「えっ?…ああ、そうそう。
一昨年…そうそう」
慌てて、ビールをゴクゴク飲み出した。
最近、昌也は誰か女性にネックレスをあげたんだ。
こうやってごっちゃになっている感じ、
浮気相手は沢山居るのではないだろうか?
なんだか冷めた気持ちで昌也の顔を見るが、
凄い私のタイプの顔で、こんな時でも見惚れてしまう。
誰に昌也の写真を見せても、みんな昌也をカッコいいと言う。
自慢の、私の彼氏。
こういうのを、トロフィー彼氏とかっていうのか?