「真湖ちゃんは、まだこんな事を続けるの?」


私がこうやって、一夜の身近な男性と寝たりする事だろうか。


「そうですね」


修司とも、中とも。


「そっか」


「一枝さんは、そんな私をどう思います?」


「どうって…」


そう言われ、訊き方が漠然とし過ぎていたか、と思う。


「辞めた方がいいと思います?」


もしそうだと言われても、辞められないけど。


「人間って、言葉に出来ない感情を抱いて、今の真湖ちゃんのようにこうやって他人には理解し難い行動を起こしてしまう事もあるけど。
それで少しでも真湖ちゃんの心が安らぐなら、いいんじゃない」


一枝さんだから、けっこうキツイ事言われるんじゃないかと思っていたけど。
その優しい言葉に、なんだか泣きそうになる。


「ただ、俺はもう真湖ちゃんと二度目はないかな。
さっきから、いっちゃんの事を思い出し過ぎて、苦しいから」


一枝さんの目は、うっすらと涙が浮かんでいて。
必死に泣かないように耐えているのが分かる。


「そうやってあなたの苦しむ姿が見れて、私は満足です」


そう言うと、何故だか涙が溢れて流れてしまう。


「真湖ちゃんはまだまだ、加賀見一夜に捕らわれて、彷徨い続けるんだろうね?」


一枝さんの言うように、まだ一夜の思いに出口を見付けられない。
どうしたら、一夜を忘れられるのだろうか。


まるで、今も夜の中を彷徨うようで。



(終わり)