その後、車内は会話がなく静かで、私は窓の外の景色を見ていた。


途中、ちゃんと家に送って貰えるのか不安になったけど、
暫くすると、見慣れた風景が目に入り、ホッとした。



「あ、この辺りで大丈夫です」


私がそう言うと、道路の端にベンツは止まる。


「あーあ。もう真湖ちゃんとお別れか」


そう、一夜は寂しそうに私を見ている。


「うん。今夜はありがとう」


そういえば、この人には私の誕生日を祝って貰ったな、と思い出す。


「もし良かったら、今度ゆっくりとご飯でもどう?」


そう一夜に言われ、少し驚いた。


それって、また私に会いたいって事なのだろうか?


今夜は急な用事がこの人に入ったけど、
そうじゃなくても、この人はあれ以上私に何もしなかっただろう。


なら、また私に会いたいこの人の目的は何なのだろう?


私の事を、好きになったって事はないにしろ、
気に入ったのだろうか?


「私、彼氏居るけど、いいの?」


そう言うと、クスリ、と笑われる。


「いいよ。俺、頑張って真湖ちゃんとその男、別れさせる」


本気なのか冗談なのか分からない感じで、そう返される。



「別れないよ、私」


「とりあえず、LINE教えて?
また連絡する」


そう言われ、私は鞄からスマホを取り出した。


それを見て、ズボンのポケットから一夜もスマホを取り出す。


そして、LINEの交換をした。


「じゃあね、真湖ちゃん」


「うん…」


一夜にそう返事をし、私はベンツから降りた。


そして、なんとなく逃げるように早足で、自宅のあるマンションへと急ぐ。


一夜は怖くないが、あの永倉ジュニアと英二って人は、とても怖くて。


なんとなく、あの二人は私の事をよく思ってなさそう。


一度、バックミラー越しに永倉ジュニアと目が合ったが、
私を警戒したような目をしていたから。