「真湖さん、何か飲まれますか?
あまりお酒強くないですよね?」


「一夜から、聞きました?」


私があまりお酒が強くない事も、一夜から聞いたのかな。


「まあ。加賀見会長、本当によく真湖さんの話をしてました」


そう、懐かしむように早瀬さんは微笑んでいる。
一夜と早瀬さんは、同じ警察のエスとして聖王会に潜り込んでいたのだけど、
それだけの関係だけじゃなく、本当に仲が良かったのだろうな。


「じゃあ、飲もうかな?
って、そのつもりで来たんですけどね」


私はそう言って、早瀬さんの真向かいになるようにカウンターの席に座る。
店内はカウンターとテーブル席が二つあるが、お客さんは私しか居ない。


今夜は大雪の警報が出ていて、多分、それで他にお客さんが居ないのかもしれない。
電車は終電待たずに止まるだろうから、私はタクシーで帰ろうと思う。



「それにしても、早瀬さんイメージ変わりましたよね?
最初、違う人かと思いました」


私の知っている早瀬さんは、きっちりとスーツを着て。
髪もセットし、銀フレームの眼鏡のイメージだったけど。


今はコンタクトなのか、眼鏡は掛けてなく。
ラフな黒いロンTで、髪も以前は真っ黒だったのに、今は茶色くて。


以前は、早瀬さんが女関係が乱れていると聞いて意外だったけど。
今は、そんな風にわりと見える。


「ああ。俺、元々はこんな感じなんですよ。
加賀見会長に、秘書っぽくしろって言われて。
あの人の言うがままにしたのが、真湖さんの知ってる俺で」


「そうなのですね」 


クスクスと笑う。
言われてみると、以前の早瀬さんはいかにも厳格な秘書って感じだった。