「なら、うちの母も、久しぶりに真湖さんの顔を見られて喜んでいたでしょうね」


そう笑顔を返してくれて、
私の心配は杞憂だったみたい。


つい先程迄、この人の母親の幸子さんのお店へと行っていた。
早瀬さんの住んでいる場所も連絡先も知らない私は、お礼を言いたくても言えなくて、この人の母親に聞いてみようと訪ねた。


そしたら、このお店の事を聞いて、そのままの足でやって来た。



「はい。でも、幸子さん私の顔を見て驚いていて、少し困ってました。
なので、早瀬さんの事を聞いてすぐにあのお店を出ました」


一夜が殺害され、そんな私にどう声を掛けていいのか、幸子さんは困っていたのだろう。
いや、一夜や早瀬さんから、私がもう色々と知っている事を聞いていて、それもあって私を見て困ったのか。


「真湖さんを見て、加賀見会長の事を思い出して感傷的になったのかもしれませんね。
うちの母親は、加賀見会長の事を可愛がってましたから。
なので、加賀見会長が真湖さんの事を連れて来た時も嬉しそうでした。
真湖さんと幸せになって欲しいと思っていたと思います。
復讐なんて、辞めてしまっても良かった…」


最後の言葉には、どう言葉を返していいか分からない。


私の本音は、復讐なんて辞めて欲しかった。
けど、この人を責めるみたいでそれは言えない。


早瀬さんも幸子さんも、一夜が亡くなり悲しんでいる。
一夜と同じように自分達の復讐の為に、一夜が自身の命を犠牲にした事を悲しんでいるから。