真湖ちゃんと、別れた。


その時は、思っていたよりも少し早くなった。


「いっちゃん、大丈夫?」


「大丈夫じゃない」


失恋した俺を心配して、真湖ちゃんと別れた翌日の夜、ナガやんが俺の部屋に来てくれた。


「…だろうね。
いっちゃん凄く目が腫れてる」


ナガやんはいつものように、俺の部屋のソファーに腰を下ろす。


スーツ姿で、きっと、今夜は仕事を早く終わらせて来てくれたのだろう。


「ナガやん忙しいのに、ごめんね。
彼女と別れたくらいでLINEして」


昨日の夜、真湖ちゃんと別れて自宅に戻ると、泣きながらナガやんにLINEしていた。


真湖ちゃんと別れた、と一言。


ナガやんは、明日の夜時間作るから、その時話聞くからと返事を返してくれて、
俺はよろしくお願いします、と頭を下げたウサギのスタンプを返して…、

今に至る感じ。


「やっぱりさ、恋よりも友情だよね?
ナガやん大好き」


俺はベッドから降りて、ナガやんの向かいに座る。


「いっちゃんが、振られたの?」


「ううん。別れを切り出したのは、俺だけど」


「なんで?」


「だって、真湖ちゃん、大学卒業したら警察官になるとか言うからさ」


嘘ではないがそれは一部分で、夕べの真湖ちゃんとの会話の全ては流石にナガやんには言えない。


言わなくても、なんとなくナガやんは気付いてそうな気はするけど。


俺が警察と裏で繋がっている事。



「へぇ、真湖ちゃん、警察官になるんだ」 


「ジュニアから、聞いてない?」


ジュニアが真湖ちゃんが警察官になる事迄知っていたのかは知らないけど。


ナガやんの顔を見る感じ、知らなかったぽいけど。


「なんで、ふうちゃん?」


「真湖ちゃんのお父さんも警察官なんだけど、その人、聖王会を嗅ぎ回っててジュニアがけっこう煙たそうにしてたから」


今まで、ナガやんとその辺りに触れた話をした事はないが、
ジュニアが知ってるなら、ナガやんも知ってるだろう。


現に、知ってるって顔してる。


「あ、そういえば、前にふうちゃんに忠告された事はある。
いっちゃんの女にあんまり余計な事話すな、って。
"あの女、何も知らないみたいな面しながら、何か企んでる"って」


そう言ってナガやんが笑うから、俺も釣られて笑う。


真湖ちゃん、本当に何も知らなかったんだけどね。