「あ、LINEで思い出した!」


「どうされました?!」


俺の独り言が大きくて、早瀬はそう尋ねて来る。


「お友達の女の子のLINE、ブロックしとかないと。
真湖ちゃんと一緒の時に連絡とか来たら、面倒だから」


「加賀見会長は、あの真湖さんの警察官の彼氏と違い誠実なんですね」


そう言われ、真湖ちゃんの彼氏の本堂を思い出した。


いや、元カレだった。


今の真湖ちゃんの彼氏は、俺だから。


「早瀬、元カレだから。
今カレは俺だし」


ちょっとむきになって言うと、ふっ、と鼻で笑って返された。


「俺は、誠実なのだろうか…」


そう自分で疑問に思ったのは、その女の子達のIDをブロックはするが、削除はしないから。


真湖ちゃんと別れたら、ブロックを解除して何もなかったように、その女の子達にまた連絡すると思う。


真湖ちゃんとは、長く付き合えない事は初めから分かっているから。


真湖ちゃんと別れた後の寂しさを埋める為に、その女の子達を利用すると思う。


利用と言っても、みんなうちの組の息の掛かってる店のホステスや風俗嬢なのだけど、
見返りに分かりやすくお金をあげたり何かを買ってあげたり、聖王会会長の俺と寝る事をステータスだと思っている女の子達だから、お互い様で。


だから俺も、今まで特に罪悪感とかはなく、楽しんでその女の子達を抱いてたけど。


真湖ちゃんと別れた後、そんな女の子達と関係持っても、逆に虚しくなりそう。


そう思うと、ブロックした女の子達のID を削除して行く。


「俺は、誠実じゃない」


そう思ってしまったのは。


もし、真湖ちゃんと明るい未来があるとすれば。


この女の子達のID を消さなかったかもしれない。


ちょっとくらい、バレないように真湖ちゃん以外の女の子と遊んでもいいんじゃないか、とか、思ったかもしれない。

俺って、昔からけっこう軽いし。

軽い、はずなんだけど。


なんだか、俺らしくない。


「そうそう。加賀見会長と付き合っているなら、真湖さんの事はこれからは姐さんと呼んだ方がいいでしょうか?」


早瀬の言葉に、それは辞めて、と首を振る。


「他の奴にも言ってて。
姐さんとか、真湖ちゃんの事そんな風に呼ばないで」


過去、俺の彼女をそう呼ばれていた事もあるし、この世界、兄貴分や親分の妻や彼女がそう呼ばれる事は当たり前の事だけど。


なんとなく、真湖ちゃんはそんな風にはしたくない。


それは、俺自身この世界に今も嫌悪があり、真湖ちゃんの事を本当に好きだから。


汚したくないような、感じ。


それにしても、さっきからずっと胸が苦しい。