昨日の夜、真湖ちゃんと正式に付き合う事になった。


気持ちを伝え合い盛り上がった俺達は、ホテルへと行き夜を共にした。


そして、今さっき。

こっそりと自宅を抜け出していた俺は、組の奴らに真湖ちゃんとラブホテルから出て来た所を待ち伏せされてしまい、
その流れで早瀬の車に乗り込み、真湖ちゃんを自宅のマンション近く迄送った。


真湖ちゃんが車から降り、暫くして早瀬が車を発進させると、大きく息を吐き出す。


これで、いいのかな、とため息。


真湖ちゃんとは、お互いに惹かれ合っている事は分かっていたけど。


付き合って、良かったのかな。


それにしても、いい歳して昨日の夜は凄くドキドキとしたな、と思う。


夜景を見てる時も、真湖ちゃんを抱いてる時も。


心臓が壊れんじゃないかってくらい、ずっと強くドクドクと鼓動を打っていた。


いつもは、あっちの方もあんなに早くないのにな、と不思議に思う。


「加賀見会長。
本当に、綾瀬さんの娘と付き合ってるのですか?」


早瀬は後部席に座る俺の方を振り返る事はなく、そう尋ねて来る。


早瀬は二人の時は、こうやってエスである俺達として話して来る。


俺と早瀬は、その綾瀬さんを含む警察の指示で聖王会に潜り込んでいて。


偶然出会ったその綾瀬さんの娘と、俺が恋愛関係に、って。


「そう。本当に付き合ってる。
しかも、俺けっこう本気で、何やってんだろう、って自分でウケてる」


「そうですか。加賀見会長があの子を好きになってるのは、なんとなく分かってました」


「え、俺、バレバレ?」


早瀬には、永倉二葉から綾瀬さんの娘である真湖ちゃんを守る為に、
真湖ちゃんとはこれからも接触する、とは、こないだの焼肉とボーリングの後、話していたけど。


綾瀬さんの娘と偶然会って知り合ったのは、その前から早瀬には話していたかな。


やっぱり真湖ちゃん可愛いし、本当に好きになっちゃうよね。


「いや、バレバレもなにも、俺が居るのに車の中であんな風に情熱的にキスされて」


そう言われ、あの夜、車から降りようとする真湖ちゃんを帰したくなくて、引き寄せ、キスしたな。


「でも、俺がそうやって早瀬の前で女の子とイチャイチャしてるの、今まで何回かあると思うけど」


なんなら、この車で同じ状況で女の子とチューもある。


「あんな風に強く求めている加賀見会長は、初めて見ました」


「それは、カッコ悪い所見せたかな」


恥ずかしさから、両手で顔を覆うと、


「真湖ちゃんと付き合えて、つかの間と分かってても、俺、今凄い幸せ」


そう幸せを、噛み締める。