「真湖ちゃん、大好きだよ」
二人で、今日も一夜のベッドでゴロゴロとしている。
もう、3日くらい私は一夜の部屋に泊まっていて、こんな感じ。
1日の大半を、二人でこうやってベッドで過ごす。
「私も、大好き」
そう、子供のように一夜に甘える。
「本当に、真湖ちゃんは可愛いからな」
寝転んだまま、私をぎゅうと一夜は抱き締めてくれる。
一夜は私よりも一回り年上だからか、
こうやって甘えさせてくれるのが上手い。
「思ってたんだけど、一夜はずっと、私の事、ちゃん付けだよね?
"真湖"って呼ばないよね?」
「真湖って、呼ばれたいの?」
「ちょっと」
本当は、ちょっとじゃなく、凄く呼ばれてみたい。
「真湖、大好きだよ」
柔らかくそう言われて、かなりキュンとしてしまった。
けど。
「やっぱり、真湖ちゃんって呼んでくれる方が、一夜らしくていいや」
なんか、違和感。
「え、何それ?」
そう言いながらも、一夜自身も違和感があったのか、笑っている。
「じゃあ、次は、好きよりも、"愛してる"って言ってよ?」
そういえば、一夜に一度も愛してると言われた事がない事を思い出した。
「え?愛してる?」
「そう」
そう言うと、一夜は照れてるのか、困った表情を浮かべている。
「愛してる、とか凄い照れるし。
実際、愛してるとか言うの、違和感あるって」
一夜って、けっこう大胆なようで、
凄く恥ずかしがり屋な所がある。
恥ずかしいのを、そうやって大胆な振りして、誤魔化しているんだろうな、って、気付いているけど。
まあ、けど、愛してるなんて、私も女友達に、冗談でしか言った事ないけども。
「私、一夜に愛してるって言われたいなぁ」
そう、故意に上目遣いで一夜を見る。
自分でも、ちょっとあざといと思う。
「えー、真湖ちゃんにそんなに可愛くお願いされたら、俺言うしかないじゃん」
一夜は、ちょっと待って、と、一度息を吐くと、
「真湖ちゃん、愛してるよ」
そう、うっとりとするような声でそれを口にした。
だけど。
「んー、なんか一夜には、愛してるよりも、好きとか大好きって言われる方が、嬉しいかもしれない」
心が、いつもみたいにドキドキとしない。
「えー、何それ?
じゃあ、俺もう二度と真湖ちゃんに愛してるとか言わない」
そう、ちょっと拗ねたような顔をしていて。
「俺、真湖ちゃんには、もう好きしか言わない。
真湖ちゃん、好きだよ」
この人、たまらなく好きだな、って思った。
だから、一夜は私に愛してるは言わない。
そして、終わりのある私達に、永遠なんて言葉は使わない。



