再び、あのラブホテルの707号室へと戻って来た。


朝出た時よりも、部屋はひんやりとしているように感じた。


部屋の温度が低いからか、テーブルの上のケーキは溶けずに綺麗なまま残っている。


「ケーキどうしよう…」


夜、一夜が来てから食べようと思って、手を付けていなかった。


「あ、食べるなら、フォークがいるよね」


ホテルの人に借りに行くか、それともすぐそこのコンビニに買いに行くか。


ベッドの近くに、私が数えて纏めた薔薇がある。


999本は、流石に花束には出来ないな。


初めの約束の千本の薔薇の意味は…。


"1万年の愛を誓います"


1万年も生きられるわけがないけど、死ぬつもりの一夜は、

私に1万年の愛は誓ってはくれなかった。


"何度生まれ変わってもあなたを愛する"


999本の真っ赤な薔薇の意味。


「本当、一夜はキザだな」


目から涙が溢れ、目の前が滲む。


真っ赤な薔薇が輪郭を無くして、ただ真っ赤に滲む。


もう、この世に加賀見一夜は居ない。


もし、私もまた生まれ変わったのならば、一夜を愛する。


何度生まれ変わっても、そう。


一生や1万年よりも、それはもっと永遠に。