「私、いつか一枝さんの事をこの手で逮捕する」


この人を逮捕したかった父親の思いを受け継ぐのもそうだけど、
友達だから、と情に負けてこの人を犯罪者に出来なかった、一夜の思いも。


「真湖ちゃん警察官なんだよね?」


その辺り、一夜から聞いていたのか。


「一夜の為に、今は見逃すけど」


一夜は、今回この人を庇った。

自分を殺した犯人の一人なのに。


「見逃してるのは、俺の方なのに」


そうクスクスと笑っている。


「どういう意味ですか?」


「真湖ちゃんは色々といっちゃんから俺の事聞いてるだろうから、厄介な子って事。
けど俺は、強敵だよ?」


「それでも、絶対に逮捕する」


「そう。頑張って」


一枝さんはそう言うと、そろそろ帰るね、と私に踵を返し背を向けて歩き出した。


その背中を睨み付けるようにずっと見ていたけど。


なんだか、その背がとても悲しんでいるように思えた。