『けど、真湖ちゃん来ないみたいで良かったね?
来てたら、真湖ちゃんも一緒に死んでたよ?』


「真湖ちゃんは、来ないよ」


『そっか。
俺も半信半疑だったんだよ。
いっちゃんが、こうなるように俺を誘導してるのか、そうじゃないのか。
もし誘導してるなら、真湖ちゃんを危険に巻き込むような事はしないかって』


やはり、ナガやんには俺の考えていた事はお見通しみたいだな。


俺は、ナガやんが俺を殺すように、導いた。


「きっとナガやんは、いつか邪魔になりそうな真湖ちゃんも俺と一緒に消してしまいたかったんだろうけど」


『そうだね。
大切な弟のふうちゃんを殺されて、いっちゃんの事はそれくらい憎いよ。
いっちゃんの大切な真湖ちゃんも、殺してやりたい』


真湖ちゃん…。


「お願い、ナガやん…。
真湖ちゃんには…、あの子には何もしないで…お願い…」


そう言った自分の声が掠れていて、泣くつもりなんてないのに、俺は泣いてる。


ホント、あの子の事になったら、俺はダメだな。


今でも、真湖ちゃんの事が大好きで、会いたくて。

心配で仕方ない。



『…分かった。
真湖ちゃんには、何もしない。
だから、いっちゃん安心して死ねばいいよ』


「ナガやん…。ありがとう」


『真湖ちゃんに、何か伝えたい事ある?
伝言してあげる』


真湖ちゃんに、伝言…。


「…ないかな」


真湖ちゃんには、一緒に居た間、沢山好きだと伝えた。


何度も真湖ちゃんを可愛いと思って、それを伝えたし。


これ以上ない程、俺は真湖ちゃんを愛した。


これ以上真湖ちゃんに伝える事はないくらい。


『そろそろ、時間かな』


目の前の男が、一歩こちらに足を進め。


そして、何の迷いもなく引き金を引いた。


『いっちゃん、ハッピーバースデー』


大きな音がして。


同時に通話が切れたのか。


もう何も聞こえなくて。


幕が降りたように、目の前が真っ暗になった。


その寸前、自分の飛び散る真っ赤な血が見えたような気がした。



もし、今夜真湖ちゃんが来たら…。


真っ赤な部屋を見て、驚くだろうか…。