「本当に、真湖ちゃんのマンション迄送らなくていいの?」


「うん。ありがとう」


あの後、一夜にはあの港からすぐ近くにある、駅迄送って貰った。


早く一夜と離れないと、このままずるずると離れられなくなりそうだから。



「真湖ちゃん。お父さんの事はごめんね」


「別に、一夜のせいじゃないよ。
それに、あくまでも一夜の憶測なんでしょ?
お父さんは生きてるって、私は思っていていいかな?」


「うん…」


駅まで送って貰う間少し話したが、
証拠が何もない以上、永倉ジュニアが私のお父さんを殺した事は、
もうどうにも出来ない、と一夜に言われた。


それに、これ以上その事に私が関われば、
今度こそ、私が永倉ジュニアにどんな目に遭わされるか分からない、と。


「一夜、大好きだよ。
出会えて良かった」


そう言うと、いつも向けてくれていた笑顔で私を見てくれる。



「真湖ちゃんは、本当に可愛いな」


そう言って、私の頭を撫でてくれた。


そして、

「真湖ちゃん、俺の分も立派な警察官になって」


敬礼するように、右手を額に当てている。


「うん」


私も同じように、敬礼すると、一夜の車から降りた。



車から降りて、すぐに駅に入り柱で隠れると、
床にゆっくりと座り込み、泣いた。


もう、限界だった。

なるべく、一夜とは笑って別れたくて。


泣ける場所を、探していた。


ここなら、一夜に見られず、泣ける。


「一夜…ずっと一緒に居たかったよ…」


その後は、大きな声を出して泣いた。


駅構内を行き交う人が、そんな私をチラチラと見ていたけど。


涙腺が崩壊して、ずっと泣き止めなかった。