「俺、真湖ちゃんにけっこう嘘付いてたから。
怒ってるよね?」


「本当、一夜は嘘つきだから。
怒ってるよ」


「だよね?」


「なんで、バニーガールのお尻触るの?
触らないって、約束したのに!」


「え?それ?
ほら…、あの場では、やっぱりヤクザっぽく振る舞わないと…」

そう、言い訳するように口にしている。


「ムカつくから、最後に一発殴らせてよ!」


本当にそれが一番、一夜に対して腹が立つ。

何よりも、その事が許せない。


「んー、仕方ない。
真湖ちゃん、グーで思いっきり殴ればいいよ」


一夜は私に顔を向け、ギュッと目を瞑っている。


その顔を見ていたら、すごい腹が立つんだけど。

それ以上に、愛しさが込み上げて来る。


私は一夜のパーカーのトレーナーの襟首を掴み自分の方に引き寄せると、
一夜の唇に自分の唇を重ねた。


それは、ほんの一瞬で、すぐに私は一夜から唇を離して、襟首を掴んでいた手も離した。


一夜は目を開き、私に真っ直ぐと視線を向けた。


「――けっこう、効いた」


泣きそうな顔で、笑っている。


きっと、私も同じような顔をしているだろうな。