夜と遊ぶ


「真湖ちゃん、綾瀬さんから全く俺の事とか聞いた事なかった?」


「ないよ。
一夜の事だけじゃなく、家族に仕事の話をする人ではなかったから」


「まあ、それが普通だよね。
本堂の馬鹿みたいに、警察官が仕事の事をペラペラ話さないよ」


昌也は、本当によく仕事の話をしていた。

真湖は、身内みたいなものだから、って。


まだなのに。


「綾瀬さん、俺に真湖ちゃんの話、よくしてたよ?
娘も俺と同じ警察官になるんだって。
きっと、綾瀬さん嬉しかったんだろうね?」


やはり、一夜は知っていたのか。


先程の、まだ拳銃を見た事がないと言われた時に、そう思った。


私は大学卒業後、半年間警察学校へと行き、その後警察官になる予定。


「親と同じ職業に就くなんて、珍しくないよ」


なんだが、父親がそれを喜んでいたのだと聞いて、意外なのもそうだけど、照れ臭い。


うちのお父さんが、まさかって感じで。


私にそれを喜んでいる素振りなんて、微塵もみせた事無かったから。


「でも、真湖ちゃんのお母さんは弁護士なんだよね?
警察官じゃなく、弁護士にはなりたくなかったの?」


「一夜って、意地悪」


なれるなら、私は警察官よりも弁護士になりたい。


一夜はクスクスと笑っていて、その笑い顔を見ていて、安心した。

この人がヤクザなのか警察のエスなのか何者なのか分からないけど。

一夜は、一夜なんだって思えた。


「けど、一夜。
いつも護衛とか付いていて、どうやって私のお父さんとかと接触していたの?」


「昔は、周りの目を盗んで接触出来たけど、綾瀬さんには直接はもう何年も会っていない。
段々と俺が身動き取れなくなって来たら、俺が接触しても怪しまれない連絡係を使って伝言頼んだり、その連絡係のパソコンを借りてスカイプで話したり…。
ちょっとした報告は、ネットの将棋の対戦ゲームを使ったり」


将棋の対戦ゲーム…。

私と居る時も、時々、オンラインで将棋の対戦ゲームを一夜はしている事があった。


「あらかじめ、決めていた暗号があって。
将棋の駒の置いた位置や、その駒の種類で」


"――2八銀……。それは難しいね――"


以前、一夜が早瀬さんと車の中で目隠し将棋をしていた事を、思い出した。


「もしかして、早瀬さんも…」


一夜と同じく、エスなの?