風呂から上がり部屋に戻ると、着たばかりの浴衣を直ぐに脱がされる。


寝室へと連れて行かれて、畳に敷かれている布団に押し倒された。


「ちょっと久しぶりだから、また朝迄寝かさないと思うけど」

そう言う一夜は、いつもの一夜らしくて。


なんだか、安心した。


先程の露天風呂の雰囲気を、引きずっていなくて。


終わりが来る事が分かっている関係だけど、その時迄はずっと一夜と笑い合っていたいから。


「一夜。朝迄ずっと私を抱いていて」


「うん。何度でも」


そう、キスを落として来る。


キスをしながら、お互いの手を重ね、指を絡めた。


ずっと離れたくないな、って、一夜の手を強く握った。



今夜はずっと、私は一夜の手を握ってばかりだった。


一つになるその時も、そうで。


「…んっ…一夜…ずっと…私の側に居て…」


そう、自然と出てしまった私の言葉に、一夜は何も言葉を返してはくれなくて。


もう私が何も言わないように、キスで口を塞がれた。


そしたら、言葉の代わりに涙が出て来て。

一夜に気付かれないように、静かに涙を流した。




目が覚めると、いつもは私よりも後に起きる一夜の姿がなかった。


一夜?


それに不安になり、寝室を出ると、
窓ガラスの向こう、露天風呂に入っている一夜の姿が目に入った。



私は部屋から出て、一夜に近付く。


「真湖ちゃん、おはよう。
真湖ちゃんも一緒にどう?」

そう言って、お湯を叩いている。


「夕方には、此処出るんだよね?」


今は、昼はまわってそうだけど。


何時かは、分からない。


「うん。今夜、組の新年の集まりがあって。
本当はもう一泊したかったんだけど…。
あ、でも、2泊で取ってるから、真湖ちゃんもう一泊してもいいよ?」


「一夜が居ないなら、こんな素敵な温泉でも旅館でも、意味ないよ」


「じゃあ、一緒に帰ろっか?」


「うん」


こんなにも、この人と一緒がいいって思うのにな。