「けど、真湖ちゃん一緒にお風呂には入ってくれたけど、
タオルで隠してるし。つまんなーい」
一夜は、少し広いこの露天風呂で子供のように軽く泳いでいる。
なんとなく、一夜の背中のライオンも気持ち良さそうに泳いでいるように見える。
「一夜だって」
そういう自分だって、腰にタオルを巻いている。
一夜はターンして、私の方へと抱き付くように泳いで来る。
その時、私のバスタオルを剥がすように掴まれ、胸が露になった。
「ちょっと、一夜?!」
「わざとじゃないよ」
絶対わざとだと思う笑顔を浮かべている。
私が恥ずかしくて背を向けると、背後から抱き締められた。
「捕まえた」
耳元で、クスクスと笑っている。
なんだか、凄く照れ臭い。
一夜の両手が下りて来て、私の両胸を持ち上げるように掴む。
「こうやって寄せたら、真湖ちゃんけっこう胸あるよね」
「ちょっと、一夜…」
その両手が、私の両胸を揉み出していて。
ちょっと、変な気分になりそうと思った所で、一夜の手の動きが止まる。
「ねぇ、真湖ちゃん、上見て」
そう言われ、上を見ると、屋根からはみ出た夜空には沢山の星が光っている。
「嘘?凄い綺麗!」
目の前の一夜に気を取られていたが、こんなにも星が綺麗だなんて。
一夜と二人、もっと星空が見える位置へと移動する。
露天風呂の奥の縁に私が腕をつき、
一夜はまた私を後ろから抱き締めて来る。
「なんだか、こんなにも沢山の星を見ながらお風呂に浸かるなんて、贅沢」
私はうっとりと、その星空を見上げる。
キラキラと光っていて、星が降ってきそう。
「そう?」
「うん。一夜はこんなにも私に贅沢させて、一体どうしたいの?」
「別に、真湖ちゃんが好きだから、してるだけだよ。
特に、目的はないよ」
「本当に?」
「んー、もしあるなら、別れた後も、10年くらいは俺の事を忘れず、引きずって欲しいな」
「10年?」
一瞬、10年って長いな、って思ったけど。
私の人生の中での10年なんて、短くて。
一生、じゃないんだって思った。