「真湖ちゃん。
俺が、本堂と真湖ちゃんとの事を許せたのは、真湖ちゃんと俺はいつか終わるって思っているからなんだと思う。
どうせ、いつか別れるんだから、って」


「うん…」


今、また改めてそうやって言葉にされるのは、
私が少しでも期待しないようになのだろう。


一夜も、この場所で幸せそうな夫婦を見て、私のようにそれを考えてしまったのだろう。



「真湖ちゃんの事は、本当に好きで大好きなんだけどね」


「私も、一夜が大好きだよ…」


「前に言ったように、俺は一生誰とも結婚しない。
ヤクザを辞める事もない。
俺はヤクザのまま、死ぬと思う」


「うん…」


なんだか、フラれたわけじゃないのに、
胸がズキズキと痛い。


「真湖ちゃんには、本当に好きだから幸せになって欲しいな。
あっこの席に座ってる夫婦みたいに、いつか真湖ちゃんも」


一夜の目線の先には、幸せそうに笑いあっている、夫婦の姿があり。


奥さんの方は、お腹が少し大きくて。


エコーの写真を、二人で見ている。



「此処で真湖ちゃん待ってる間、真湖ちゃんと別れる事も考えたけど。
やっぱり凄く真湖ちゃんが大好きで、離したくなくて。
俺の勝手なの分かってるけど、まだ俺の側に居てくれない?」


「うん。私だってまだ一夜と離れたくない」


私がそう言うと、一夜は、じゃあ、と切り出す。


「真湖ちゃんの事、もっと束縛していい?」


「束縛…?」


いまいち、話の流れが分からない。


「俺さ、自分がGPS とか付けられて、おっさんらに軟禁されて、本当にストレスでたまんないんだけど。
だから、同じような事するのは忍びないんだけど…。
けど、今日とか真湖ちゃんから連絡なくて、本当にモヤモヤして。
だから、GPS 付けさせて!
そして、もっと細かく俺に行動を連絡して?」


「え、いいけど…」


そう言うと、一夜の表情が明るくなる。


一夜って、意外とそういうタイプなんだ…。


束縛とか、するんだ。