例えば今日、世界から春が消えても。

その後はメリーゴーランドに乗って写真を撮ったり、空中ブランコに乗って僕の靴が飛んでいくという奇跡にも近い光景を目の当たりにし、2人で腹がよじれる程に大笑いをして、今に至る。


「あはははっ…無理、あの時の冬真君、顔面真っ青…駄目だ、思い出すだけで笑いがっ…」


「ちょっと、僕の黒歴史思い出さないでよ。これでも見て落ち着いて」


密室空間となった観覧車の窓を叩きながら思い出し笑いを始めたさくらに、僕は苦笑しながらある写真を見せつける。


「えっ?…ふふっ、あああお腹痛いやだちぎれるっ…!」


さくらがみた写真は入場する直前に彼女が撮った僕の間抜けな姿で、彼女は今度こそお腹を抱えて笑い転げた。



外から観覧車を見ている人達はきっと、その内の1つが妙に激しく前後左右に揺れ動いている事に気付くだろう。


そしてその1つこそが、紛れもなく僕達の乗っているゴンドラだ。


笑い過ぎて涙を拭いた彼女は、ヒィヒィ言いながら手で顔を扇いでいる。


そんな彼女を見た僕は笑顔になり、窓の外へと顔を向けた。



笑いながら話しているうちに徐々に高度が上昇していたらしく、ゴンドラの外には綺麗な街並みが浮かび上がっている。


1つ1つの建物が太陽に照らされ、まるで海の水のようにキラキラと光っていて本当に美しい。