例えば今日、世界から春が消えても。

「それはちょっと、無理かもしれない」


「でしょう?…なら、もう絶対謝らないで。冬真君は、」


最後に鼻を啜った彼女は、涙に濡れた目を真っ直ぐに向けてきた。


「嘘でも、私の彼氏なんだから」



上目遣いにそう言ってきた彼女が可愛かったせいで、意志とは関係なしに笑みが漏れる。


それを見たさくらも、泣き笑いを浮かべて。


お互いの下手くそな笑顔がぶつかり合って、一輪の花を咲かせた。





「いやー、今日は本当に楽しかったね!私のわがまま聞いてくれてありがとうね」


「こちらこそ。でも、もう金輪際空中ブランコには乗らないよ」


「私も!冬真君の靴が飛んでったの見た時、笑い過ぎてブランコから落ちるかと思ったもん」


あれから更に時間が経ち、時刻は既に夕方。


遅くならないうちに別れる事にした僕達は、最後の締めとして巨大観覧車に乗っていた。


昼食の時、泣き過ぎて微妙な雰囲気になってしまった僕達は、自らを落ち着かせて明るい空気を取り戻す為にくだらない話をし続けた。


僕の過去の事や春の事、さくらの病気の事については一切触れず、ただただしょうもない話をして本当のカップルのように手を叩いて笑いあった。


さくらの生まれ持ったユーモアセンスと絶妙に笑いのツボを押す話題のおかげで、僕達は冷え切った昼食を食べ切る頃には普段の明るさを取り戻して。