時は流れ、30年後の3月10日。
「うわー久しぶりー!2人共元気にしてた!?ってか、ヤマちゃんが髪伸ばしてるの未だに慣れないなぁ」
「その言葉、毎年言うの止めてくんない?坊主頭卒業して軽く20年は経つんだけど」
「エマも元気そうで、何よりだよ」
今日は、1年に1度、僕と大切な青春を分かち合った友が顔を合わせる日。
30年前に通っていた高校の近くにある寺の、“飯野家ノ墓”と書かれた墓の近く。
一足先に花を供えていたエマが、遅れて到着した僕達に気づいて駆け寄ってきた。
47歳になったエマは、口調も容姿も昔の面影を残したまま。
高校卒業後、本格的にモデルの道へ歩み始めた彼女は着実に成長を続け、20歳の頃に念願だったパリコレ出演の夢を叶えた。
僕と大和はテレビでその様子を見ていたけれど、ランウェイを堂々と闊歩する彼女は誰よりも輝いていて、天国のさくらも喜んでいるね、と言い合ったんだ。
そうして、今では世界的な有名ブランドに起用される程の実力を兼ね備えた彼女は、誰もが羨む美をいつまでも保ち続けている。
「俺、お菓子持ってきたから供えていい?」
邪魔邪魔、と、わざとらしくエマに手を振った大和が、よっこらせ、と服を着ていても分かる程に筋肉質な身体を曲げて墓の前にしゃがみ込んだ。



