例えば今日、世界から春が消えても。

「っ、はい……、」


ぐすん、と鼻を鳴らして前に進み出たのは、既に拭っても拭い切れない程の涙を流しているエマで。


「…サクちゃん、聞こえる、?」


覚束無い足取りでさくらのベッドの柵を掴んだ彼女は、まだ光を失っていない彼女の視界に映るように自身のワンピースの裾を広げてみせた。


「覚えてる…?これ、サクちゃんが選んでくれたワンピースだよ。…私、これがボロボロになっても絶対に捨てないからね」


嗚咽を漏らした彼女は、ふーっと息を吐いて言葉を続けた。


「私、頑張ってモデルになってみせるから…!サクちゃんが言ってた通り、パリコレで歩くから、だから、その時は……」


静かに彼女の言葉を聞いていたさくらの口角が、ゆっくりと上がっていく。


「隣で、一緒に歩いてねっ……!」


下唇を噛んで紛らわそうとしても零れ落ちる、涙。


今までありがとう、ずっと大好きだよ。

泣きじゃくりながら最後の言葉を告げたエマは、ゆっくりと踵を返して元居た場所に戻った瞬間、顔を覆ってその場に蹲った。



次に進み出たのは、震える手でサッカーボールを持ち続ける大和。


サッカーの試合で負けようが人間関係でトラブルが起ころうが、何があっても人前で涙を見せなかった彼の目には光るものが見えた。