例えば今日、世界から春が消えても。

僕の言葉を聞いた彼女は、暫く僕の瞳の奥を見つめていたけれど。


『ありがとう、冬真君』


そう言って、花が咲くような笑顔を浮かべたんだ。




それからすぐ、僕達は最後の記念写真を撮る為に慌ただしく動き回った。


さくらが目覚めたのを見た主治医は最初こそ喜んでいたけれど、直感で何かを悟ったのか、急いで写真を撮るように指示してきて。


さくらのベッドをリモコンで操作し、上体が上がった彼女の膝の上にケーキを乗せて、僕とさくらの父親が両脇からそれを支えた。


サッカーボールを持った大和とエマが僕の隣に立ち、さくらの母親が父親の隣の丸椅子に腰掛ける。


自身の強い希望と主治医の許可を得たさくらは、酸素マスクを外していて。



それはつまり、

彼女の命が、残り僅かとなったことを示していた。



「では、良いですか?こちらを向いて下さいねー」


先生の声に、僕達は頷いて笑顔を作った。


「飯野さん、良い笑顔ですよ!…では、…はい、チーズ!」


先生がさくらの笑顔を褒めた事が、まるで自分の事のように嬉しい。



全員が笑顔を浮かべ、幸せな空気に包まれた病室で、

パシャリと、シャッターが切られた。