例えば今日、世界から春が消えても。

彼女の父親の太くて大きな手が、僕とさくらの繋がれた手の上に優しく乗せられる。


「お誕生日おめでとう、サクちゃ…、」


「飯野。17歳、おめでとう」


ずっと言いたかった、祝いの言葉。


でも、その言葉を言い切るより早くエマは涙声になり、大和の声は掠れ始めて。


「さくら」


そんな中、僕は笑顔を作って呼び掛ける。


それに応えるように、さくらの母親の腕の中に包まれた彼女がゆっくりと首を傾けた。


僕の視界に移る彼女の瞳の中には、曇りひとつ見当たらない。


「…17歳の誕生日、おめでとう」


零れ落ちそうになる涙を必死に飲み込んで、

”死ぬ時、居てね”

彼女の願いがもうじき叶う事を、唇に乗せる。