「そうだね。そう見えるかも」
彼女に気付かれない位置に手をずらしながら、僕は平静を装って頷いてみせる。
彼女だけはきっと、僕みたいにはならないで欲しいと心の何処かで願いながら────。
「今日はありがとう!和田君のおかげで、教室移動も迷わなくて済みそうだよ」
「いや、こちらこそ…」
その後、教室に戻って荷物を手にした僕達は、揃って傘をさして正門を後にしながらそんな事を話していた。
右腕の傷みはいつの間にか消えていて、それに安堵する自分がいる。
「私、1週間前に此処に越してきたばっかりで全然土地勘がないんだよね。本当は始業式から来る予定だったのに、迷ったせいで間に合わなくて」
だから新学期が始まって3日目に転入してきたの、と、白い傘をくるくると回した彼女は恥ずかしそうに笑った。
「あ、そうだったんだ」
もっと会話を広げるべきなのに、何かを口にしたら彼女の気分を害してしまいそうで、結局当たり障りのない反応しか取れない。
どうしたらいいんだろう、このままだと、飯野さんは僕を“愛想が無い人”として認識してしまう。
僕は他人からどう思われようが無関心だけれど、ただ、隣の席の彼女が可哀想だ。
歩道橋の近くに差し掛かった所で、私、ここ上って帰るから、と、彼女は小さな手でそれを指さして笑う。
「今日は本当にありがとう、和田君」
彼女に気付かれない位置に手をずらしながら、僕は平静を装って頷いてみせる。
彼女だけはきっと、僕みたいにはならないで欲しいと心の何処かで願いながら────。
「今日はありがとう!和田君のおかげで、教室移動も迷わなくて済みそうだよ」
「いや、こちらこそ…」
その後、教室に戻って荷物を手にした僕達は、揃って傘をさして正門を後にしながらそんな事を話していた。
右腕の傷みはいつの間にか消えていて、それに安堵する自分がいる。
「私、1週間前に此処に越してきたばっかりで全然土地勘がないんだよね。本当は始業式から来る予定だったのに、迷ったせいで間に合わなくて」
だから新学期が始まって3日目に転入してきたの、と、白い傘をくるくると回した彼女は恥ずかしそうに笑った。
「あ、そうだったんだ」
もっと会話を広げるべきなのに、何かを口にしたら彼女の気分を害してしまいそうで、結局当たり障りのない反応しか取れない。
どうしたらいいんだろう、このままだと、飯野さんは僕を“愛想が無い人”として認識してしまう。
僕は他人からどう思われようが無関心だけれど、ただ、隣の席の彼女が可哀想だ。
歩道橋の近くに差し掛かった所で、私、ここ上って帰るから、と、彼女は小さな手でそれを指さして笑う。
「今日は本当にありがとう、和田君」



