例えば今日、世界から春が消えても。

僕達は、彼女の命の炎があと数時間で燃え尽きると理解しているけれど、

「ヤマちゃん、それ貼ったら次はこの風船だからね」

「指示ばっかしてないで、お前もやったらどうなの」

「待って、僕も手伝うよ」

それでも、笑顔を絶やさなかった。


まるで、辛くても悲しくても笑顔を見せ続けたさくらのように。






──────────……


そこから瞬く間に時間が過ぎ、時刻はあっという間に正午を過ぎた。


「よし、完成!」


そろそろケーキを出そうか、なんてさくらの両親が話し始めたのとほぼ同時に、僕達の飾り付けも終了して。


「綺麗…」


元々壁に貼られていた春の絵を残したままで新しく生まれ変わった病室の風景を眺めた僕は、達成感と充実感からほっと息を吐いた。



さくらのベッドの後ろの壁には、色とりどりの風船と花紙や折り紙で折られた花が飾られている。


彼女の頭上には、1と7の数字がかたどられた金色の風船がふわふわと浮いていて、

今日の主人公であるさくらは、いつの間にか無地の入院服からピンク色で花柄のパジャマに着替えていた。


新品だというそれを身に付けて眠る彼女は、どこぞの姫かと目を疑いたくなる程に美しくて。


ああ、こんな事を考えてにやけてしまう僕は相当の重症だよ。


さくらの枕元に近づいた僕は、既に生気を失っている彼女の青白い肌をそっと撫でた。